「無責任の体系」—安倍政権を見て思うこと

以下はOLDsメンバーの森田さんが先週の巣鴨行動で行ったスピーチ原稿です。

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日経・テレビ東京の世論調査では、安倍内閣の支持率が60%を超えました。リオ五輪閉会式での、「安倍マリオ」がウケたようです。安倍内閣の愚民政策は着々と成果を挙げているといわざるをえません。

もちろん日本人の大半は愚か者などではないのですが、安倍内閣はその危険な狙いを巧妙に隠すことに一定程度成功し、結果として多くの国民が愚か者にさせられているというのが正しい見方です。

愚民政策と言えば、古代ローマ帝国の「パンとサーカス」が有名です。ただでパンを民衆にパンを配り、大規模なイベントを次々と開催して民衆を動員し、政治に対する関心と、批判的な精神を劣化させた、これが「パンとサーカス」でした。安倍政治になぞらえると、パンはもろもろのバラ捲き政策、サーカスは東京オリンピックの政治的利用に相当します。

なぜ安倍内閣の支持率は高いのか、その謎の一端が解けた

安倍内閣の支持率の高さ、この国の有権者の良識を信じている私にとっては、かなりやっかいな謎でした。けれども、少しだけ謎は解けました。それは中島岳志東京工業大学教授が東京新聞で紹介していた、吉田徹北海道大学教授の論文「時間かせぎの政治」(『世界』9月号)を読んだからです。

それによると、アベノミクスをはじめとする安倍政権の政策は、すべてが時間稼ぎのための政策なのだそうです。内閣への期待値を上げるための時間をひねり出すのが安倍政権の常套手段です。

たとえばアベノミクス。参院選で首相は「アベノミクスは道半ば」と連呼し、自公政権への支持を訴えました。しかし実は永遠の「道半ば」こそが首相の狙いなのです。

道半ばならば、もっと良くなるのでは、との期待が続く、そうして時間を稼ぎ、その隙に、憲法の改悪を図り、国の行政を統制色で染めていくことを狙っているのです。

アベノミクスは結果がすべての政治の世界で、結果を出す必要がない、いや、出さないほうが望ましいというまことに奇怪な政策であると私は思います。

では、アベノミクスが破綻したら?

ここ巣鴨駅頭でも私が何度となく主張してきたように、アベノミクスは既に破綻しています。道半ばで立ち腐れている。これが現状です。

実は首相もそれを分かっていて、さらなる時間かせぎのネタを連発している。先日発足した新安倍内閣の名簿をチェックすると、内閣府特命担当大臣がやたらいます。

デフレ脱却担当、マイナンバー制度担当、つい2、3日前に首相のウラジオストク訪問前にひねり出されたのがロシア経済分野協力担当、まだあります。

原子力防災担当、消費者及び食品安全防災担当、沖縄及び北方対策 クールジャパン戦略担当、少子化対策男女共同参画担当、これは一億総活躍担当する加藤大臣の担当。加藤大臣は他にも働き方改革担当、女性活躍担当、再チャレンジ担当、拉致問題担当も兼務、できるんですかね。それとも最初から真面目に取組む気がないんですかね。私は、真面目に取組む気がないと判断します。そして地方創正 規制改革 まち・ひと・しごと創性担当、行政改革担当、国家公務員制度担当と、前部で6人もいます。

ついでに言っておくと菅官房長官は沖縄基地負担軽減担当だそうで、連日沖縄で基地に反対する県民に機動隊が暴力を振るっている、その弾圧の張本人が基地負担軽減だなんて、ブラックジョークもいいところです。

時間かせぎの狙いはどこに?

ところで、これらの課題で何か成果を上げたものがあるのでしょうか。皆無です。

しかし安倍総理はそれでいっこうに構わないのです。政策のバラ撒きをやって、国民の期待を高め、高い支持率をキープし、そこでかせいだ時間を使って憲法の改悪と緊急事態条項を一気呵成に実現できさえすれば、後は野となれ山となれなのです。後に残るのは、鳴り物入りでバラ撒かれた「政策」という名の粗大ゴミの山です。

ここで1930年代のドイツで起ったことを紹介しておくことは、安倍政権の時間かせ戦略の狙いを知る上で、ムダではないと思います。当時、ドイツの市民は自分たちを自由だと思っていました。ところが現実にはナチスの支配がどんどん進んでしまったのです。市民の一人はその間、「私たちの日常はほんのちょっと悪くなっただけだった。だから(ドイツが)どこに向かって、どうして動いていくのかを見極められず、小さな措置が原理的に何を意味するかを理解できず、ナチスの支配を許してしまった」と語ったそうです。

吉田教授によるとこのエピソードは、政治学者丸山眞男が著書『現代政治の思想と行動』(1956)に紹介しているとのことでした。

一見、日常生活にはなんの影響も及ぼさないような「小さな措置」は、私たちの周りでも次々に出現しています。安保関連法、特定秘密保護法、そして最近国会への上程が噂されている共謀罪などが、それです。

無責任の体系、それが安倍政治の本質

丸山眞男という名前でで思い出したましたが、彼は戦前の日本の権力構造を「無責任の体系」と定義しています。昨年末に首相はアベノミクスの「新三本の矢」として次のような目標を掲げました。

「2020年に名目GDPを600兆円」「希望出生率1.8の実現」「介護辞職ゼロ」。

これについては大方のエコノミストが実現困難な数字とし、日経に至っては「的は掲げたが矢がどこにもない」と酷評しました。まさにその通りで、「新三本の矢」は手段を欠いた政策目標に過ぎないのです。つまり政策としては無責任きわまりないしろものなのです。

安倍政治の「無責任の体系」をもう一つ紹介しましょう。来日中国人の爆買いは収まったようで、その影響は日本経済に、とりわけ小売業や観光輸送業に暗い影を投げかけています。それはともかく、いま日本に置ける爆買い王の地位にあるのは中国人観光客に代わって日本のセントラルバンク日本銀行と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。

日銀とGPIFは、アベノミクスの失敗を覆い隠すため、ひたすら株価維持を目的として、株の爆買いに走っています。

その結果何が起っているでしょうか? ヤマハの筆頭株主は日銀です。来年にはセコム、エーザイ、電通などの筆頭株主に、日銀が躍り出るともいわれています。GPIFも負けてはいません。三菱東京UFJフィアンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループ、というメガバンク2行の筆頭株主なのです。

こうなると証券会社も、各種ファンドも、個人投資家も、企業の業績や日本経済のパフォーマンスなどには目もくれなくなります。アメリカの金利と、ドル円の為替レートと、日銀とGPIFが株価支えのため爆買いするしか見ていません。

本来株式市場は、上場企業の商品開発力、販売力、技術力、財務の健全性、経営者の人格・識見・リーダーシップなどを材料に投資家が投資判断を行なうところです。そうであってこそ、多様な投資判断によって、適正な企業価値が株価として示されるのです。現状のような日銀とGPIFがつくり出す官製相場では、健全な株式市場はとうてい維持できません。

分かっちゃいるけど止められない

もちろん日銀もGPIFも内心では「ヤバい」と思っているに違いありません。しかし「ヤバい」とは口が裂けても言えないのです。言えば株価の大暴落は必至です。株価が下がれば筆頭株主は、当然ながら大損を被ります。おそらく、日銀もGPIFも巨額の含み損を抱えたくないから、必死で買い支えるしかありません。

国家の信用を預かるセントラルバンクと、私たちの年金を預かるGPIFが、こんなことをしていたら、日本経済は世界中の投資家から見捨てられ、間違いなく破綻します。でも、そんなリスクを抱え込んでも、日銀とGPIFは株の爆買いを止めることはできないのです。止めたとたんに、アベノミクスも破綻し、時間かせぎができなくなるからです。

国家のモラルハザードが進んでいる

この爆買いはもう一つの災いをもたらします。それは国家的なモラルハザードです。日本経済全体のブラック化と言ってもいいでしょう。筆頭株主が日銀やGPIFである企業は、実質的には国有企業。これは民営化と小さな政府を標榜してきた自民党の政治思想とまったく整合しません。おそらくその批判を避けるため、投資先の企業が経営不振に陥っても、筆頭株主である日銀やGPIFは投資先企業の経営に口を挟もうとはしないでしょう。

これでは企業のやりたい放題を阻むこともできません。電通と安倍政権との蜜月関係は既によく知られているところです。例のリオオリンピックの閉会式、アベマリオが登場するプランに政府は12億円をかけたそうです。仕切ったのは電通です。オリンピックにむけて電通がおいしいところを独り占めするのことはもはや業界の常識です。

さらに経営不振が進んで、破綻したとしても、政府は手厚い支援を行なうはずです。なぜなら国営企業だから。それが乱脈経営に至るのは火を見るより明らかです。これがモラルハザードでなくてなんなのか。

ここはひとつ、じっくりと考えていただきたい。

思い出してください。選挙のたびに繰り返される、争点の先送り、争点ぼかしを。

選挙後の国会で繰り返される、選挙期間中は公約に示さなかった政策の強行採決を。

これは安倍晋三という人物が、国の統治についていささかも責任を感じていないことの証明であり、国民をだますことについて、まったく逡巡していないことのあらわれです。

安倍政権は私たちのくらしの安心と安全を真剣に考えているのでしょうか?

この国の未来を明るく照らそうとしているのか、それとも戦前のような暗黒の時代をもたらそうとしているのでしょうか?

答えは明らかだと思います。

だからここで、ナチスの支配を許してしまったドイツの市民の嘆きをもう一度思い出してほしいのです。

 

「ほんのちょっと生活が窮屈になった、ほんのちょっと言いたいことが言えなくなった」。ほんのちょっとのはずが、とんでもないことをもたらしてしまう、それがナチスの手口でした。ナチスの手口というフレーズは私の発明ではありません。安倍政権の重鎮、麻生太郎財務大臣の発言です。

安倍首相の発言によれば、先ほど取り上げた「新三本の矢」は2010年目処に実現するということのようです。2010年とはまさに東京オリンピックの年。安倍首相はオリンピックに合わせて、「パンとサーカス」的政策を総動員し、憲法の改悪、戦前のような生活と思想と言論の統制になだれ込むことを目論んでいる気配がありありです。許してはなりません。

「ほんのちょっと悪くなる」の例が自民党の会見草案にある緊急事態条項には満載です。私たちOLDsは、それに反対する署名を集め、自民党総裁である安倍晋三首相に提出しようとしています。

ご協力をおねがいします。

 

ここからは蛇足です

地方創生、これも安倍政権の時間かせぎ政策です。

提唱されたのが2014年秋。まもなくそれから2年たちますが、成果は上がっているのでしょうか?

地方創生の目玉政策のひとつが政府機関の地方移転です。9月3日の朝日新聞の報道によると、42都道府県が69の政府機関の誘致に名乗りをあげましたが、移転するのはわずか3省庁の一部の機関に過ぎません。

これじゃ地方移転も地方創生も何をやっているのかわかりません。京都への全面移転が決まっている文化庁にしても、その時期は具体的に決めてない。つまりやるきが感じられません。

これが時間かせぎ政策の実態です。まさに目標があっても手段がないというか、手段をいっさい考慮していないのです。先週の週刊新潮と週刊文春で、インサイダー取引事件に関連して、証券等取引委員会に国会質問を通じて圧力をかけたと報じられ、辞任も噂されている山本幸三地方創生担当大臣はこの件に関し

「地方創生の観点もあるが、国家機関としての昨日確保や移転費用も考えないといけない。つねに可能性としての見直しを進めていきたい」と時間かせぎとしか思えない意味不明の弁明をしています。掲げた政策の実現にかける意欲も責任感もどこにも見当たりません。これが安倍政治の本質です。やりたい放題、使いたい放題の暴走を許すわけにはいきません。みなさんしっかりチェックをしましょう。

カテゴリー: こんな風に考えています パーマリンク

「無責任の体系」—安倍政権を見て思うこと への1件のフィードバック

  1. Kazue Majima より:

    森田さんの原稿を一読しました。印刷して検討をしてみたいと思います…このような気持ちになったのは久しぶりです。 私は一年ほど前にfacebookのOLDsに参加しました。巣鴨の活動には参加した事がありません…遠いので。 コメントを入れることで、OLDsに参加していたのですが、今年は多分コメントしていません。OLDsと他のグループ(2つ入会しましたが脱会しました)での経験、またそこでの、情報の切り取り方への疑問と、情報の不確かさを知り・・・facebookと参加した勉強会から見て、「戦争法に反対する」活動に対し『どちらも同じではないか』と、私は今思っています。 なぜ私はそのように思うのか…自分で確かめたいとも思い、9月からいろいろな講演会、学習会に参加しています。 まだ数少ないのですが、「戦争に反対する」勉強会・「人権に関係する」プレシンポジウム、これらには感覚に訴えて相手を引きずり込もうという私にとっては嫌な印象を感じました。 「環境への取り組みの一環的な」講演会、ここは割と理性的で、質疑の時間を十分にとり、質問への応答が納得のいくものでした。今後も講演会、学習会に参加し、考えて行きたいと思っています。

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