OLDsの第72回巣鴨行動で森田さんが行ったスピーチです

防衛大臣が逃げた?

私のスピーチ、本日のテーマは、稲田朋美防衛大臣です。

安倍首相の秘蔵っ子とも、最初の女性首相の有力候補とも言われている人物です。

日本会議国会議員懇談会やみんなで靖国神社に参拝する国会議員の会のメンバーでもあります。

国会の審議では、選択的夫婦別姓制度の推進に反対し、1999年に施行された男女共同社会参画基本法にも反対しました。

沖縄の集団自決訴訟で原告側弁護人を担当するも敗訴しています。

2005年に議員になってから(立候補を口説いたのは、当時の小泉内閣の安倍晋三副官房長官と言われています)靖国神社への参拝を毎年欠かしていませんでした。このように、稲田防衛大臣が、筋金入りの復古的かつ右翼的思想の持ち主であることを示す事例には事欠きません。

ところが、防衛大臣に就任した今年、2016年の終戦の日は、恒例の靖国神社への参拝を行なっていません。それは8月12日~8月16日の日程で、アフリカジプチ共和国で、海賊行為に対処するために設置されている自衛隊基地を訪問したためとされています。

しかし本当のところは、現職の防衛大臣の靖国参拝に対する、中国や韓国の反発に配慮した、きわめて政治的な判断であったことは明らかです。この訪問計画は防衛省内部でも「寝耳に水」だったと報じられており、中韓両国に対して「弱腰」とする右側からの批判をかわすための、きわめて姑息な策であったことは見え見えです。しかも訪問の内容はジプチ国大統領、防衛大臣との会談、米軍キャンプの訪問自衛隊機から洋上の護衛官と通信といった、身の安全が確保される地点ばかりでした。

思想的には近いはずの橋下徹前大阪市長にも「(靖国参拝から)逃げた」と批判されるていたらくで、口先だけの愛国者、中身のない右翼であることが図らずも暴露されてしまったのです。

防衛大臣がドタキャンに追い込まれた理由

その稲田大臣、こんどはドタキャンでネットを賑わせています。

安倍政権は11月に、駆けつけ警護を任務とする自衛隊の派遣を予定しています。自衛隊は2012年からすでに南スーダンでインフラ整備などの平和維持活動、いわゆるPKOを行なっていますが、私たちOLDsを含め、多くの人々が現在も反対している安保関連法の成立によって、駆けつけ警護の実施が可能となったことは皆さんご存知の通りです。

稲田大臣は9月17日に南スーダンの首都ジュバを訪問し、自衛隊の活動やその宿営地を視察する予定でした。これは日本を「戦争ができる国」にするために、安倍政権にとっては格好のイベントです。

しかし稲田大臣はジュバ訪問を前に、服用した抗マラリア薬の副作用でじんましんを発症したとの理由で、訪問をドタキャンしました。

陸上自衛隊は沈黙を決め込んでいましたが、折しも稲田大臣の訪問直前の今年7月に、ジュバでは270人以上が死亡する大規模な戦闘が発生し、自衛隊宿営地の隣のビルでも2日間にわたって、政府軍兵士2名が死亡する銃撃戦が起きていたことが明らかになりました。

この遁走劇を知って怒り狂ったのが、ネットに巣食う右翼の皆さん方でした。「じんましんは仮病で、本当は稲田は怖くなって逃げ出したのでないか」と大騒ぎになりました。ネトウヨが何をわめこうと、口先右翼の防衛大臣がビビろうと、そんなものはほっとけばいいんです。ほっとけないのは、こうした事態から分かる二つのことです。

その一つは、南スーダンにはもはやPKOで維持すべき平和が存在していないということ。もう一つは、派遣された自衛隊が戦争状態の中で、無駄死に、犬死にをしないための、政府、外務省、防衛省の備えがまったくできていないということです。

このことについては、9月19日の「戦争法廃止! 9.19国会正門前行動」でスピーチした、かつて陸上自衛隊レンジャー部隊の一員であった井筒高雄さんの証言が参考になります。

「稲田大臣のじんましんについてはつまびらかにしないが、私は今回のドタキャンにはもっと大きな理由があったと考えている。それは、防衛大臣が戦争状態にある地域の自衛隊宿営地を訪問するには、当然警護の部隊が必要になる。しかし日本の法律には、海外の戦場で自衛隊が日本の要人を警護するための法律がない。したがって稲田大臣の警護は、現状では現地に部隊を展開している韓国軍、もしくは中国軍に頼むしかない。しかし、それを実施すると、安保関連法がいかにずさんな法律であるかが、国民の前にバレてしまう。さらに、現在の日韓・日中関係のなかでは、右翼勢力になんと言われるかを考える時、安倍首相としてはそれだけは絶対避けたかった。それ故」、稲田大臣はジュバ訪問をドタキャンせざるを得なかった、と、井筒さんは言われました。

井筒さんは著書の中で、こうも言われています。

戦争とは「殺し、殺される」ことです。一人の自衛官が人敵兵を殺すには、武器よりも、作戦よりも、殺すことについての法的な裏付けが必要だと井筒さんは言います。

「万が一にでも、殺人罪で訴追されるようなリスクがあれば到底引き金を引くことはできないでしょう」。しかし現実には、海外での戦闘行為、しかも非戦闘員を巻き込む可能性のある駆けつけ警護においてはなおのこと、法の整備は安倍政権が意気込む割りには整備されていないのです。

ちなみに「殺し、殺される」という表現は、今国会の参院代表質問で共産党の市田議員が用いていましたが、それに関して安倍総理は「レッテル貼り」という言葉で切り返したつもりになっていました。この人物は「レッテル貼り」という言葉遣いそれ自体が、レッテル貼りの手口であることにいまだに気づいてないようです。国会という場での答弁としては、誠にお粗末な知性だと思います。

自衛隊員の命をぞんざいに扱う「駆けつけ警護」

それはさておき、戦闘で負傷した場合の備えもなっていません。ソマリア内戦に介入した米軍兵士が遭遇した市街戦を描いた、リドリー・スコット監督のアメリカ映画『ブラックホークダウン』には、極限状況の中で、腿を切開し、大動脈をクリップで挟んで止血を行ないながら、注射や点滴を行なう衛星兵の壮絶な姿が描かれています。衛生兵を陸上自衛隊では看護陸曹と呼びますが、現状では彼らは投薬、注射、手術などの医療行為ができないのです。その大きな理由は、長年にわたって自民党の強力な支持層であった、「医師会」の反対だそうです。

衛生兵が携行する救命機器も、アメリカ軍は18種類なのに自衛隊は僅か8種類、このことが意味するのは、井筒さんに言わせると「米軍なら助かる負傷も、自衛隊では命取りになりかねないということ」だそうです。隊員の命よりも、医師会への気遣いを重視する、そんな体制で駆けつけ警護は進められるのです。

駆けつけ警護に派遣されるのは青森市に駐屯する陸自第9師団第5普通科連隊。やはり9月19日の「戦争法廃止! 9.19国会正門前行動」でスピーチをした参議院議員の木戸口英司氏によると、この連隊は東日本大震災の直後から岩手県に入り、釜石市と大槌町を中心に、行方不明者の捜索、物資の補給、炊き出し、入浴などの支援活動を担い、多くの被災県民から感謝されている連隊です。その連隊がいま、ただただ、海外での実戦という既成事実をでっち上げたいだけの安倍政権によって、十分な制度的裏付けも支援体制もなしに、駆けつけ警護に派遣されようとしているのです。

「彼らに心を寄せてほしい」と木戸口議員は痛切な口調でスピーチを締めくくりました。

「無名の師」(名分のない作戦)を許すな

先ほども触れましたが、いま南スーダンには維持しなければならないような平和はありません。つまりPKO参加5原則を満たすような状況ではないのです。それでも駆けつけ警護を任務とする自衛隊の派遣を強行するのは、先にも触れたように、ただただ海外での戦争実績をでっち上げたいがために他なりません。戦死者が出たら出たで安倍政権は、戦死した自衛官を、使命に殉じた愛国の英雄という物語をねつ造し、国民に物語への共感を強要するに決まっています。

私はこの駆けつけ警護を任務とする自衛隊の派遣が、1918年、ロシア革命への干渉を目的に日本をはじめとする帝国主義国が行なったシベリア出兵と同じく、後世「無名の師」つまり名分のない出兵と評されることは確実だと思います。

私は先週の土曜日、この巣鴨で、改憲論者の御都合主義に難癖をつけました。同じことをまたやろうと思います。難癖をつける相手は、本日のテーマである稲田防衛大臣です。

稲田大臣は2016年5月26日号の『女性セブン』のインタビューで徴兵制について質問され、次のように答えています。「私にも大学生の息子がいますが、赤紙で徴兵されるのは絶対に嫌です」、続けて「憲法は徴兵制を認めていないし」と付け加えています。

私は先週、改憲論者には「困った時には現行憲法に依存する傾向」があることを紹介したが、この稲田大臣も、もし子息が徴兵されるようなことになったら、現行憲法の条文をたてにとって抵抗するのでしょうか。いっぽうで現行憲法の非をなじりながら、それはないでしょうと私は開いた口が塞がりません。想像を逞しくして、仮に改憲派の意向が通って、憲法が改正され徴兵制が復活した暁には、子息を軍隊にとられた稲田ママは、きっと自分が憲法改悪を先頭に立って推進したことを後悔するのでしょう。

ともあれ、ご通行中のみなさん。そう言うわけで私は、自民党改憲草案もさることながら、駆けつけ警護を任務とする自衛隊の南スーダンへの派遣にも、関心をもっていただきたいとお願いして、私のスピーチを終わります。ありがとうございました。

160924_morita-speech.pdf

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